P.I.STOCKFILE | INTERVIEW/ 02.01 攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG
 
 
「プロダクション I.G オールナイト」トークショー・レポート
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テレビシリーズのアフレコ、劇場版とゲームのアフレコ
―櫻井 アフレコに関して、劇場版『攻殻機動隊/Ghost In The Shell』とはまた違うんでしょうか。劇場版とはこういうふうに変えてみたっていう部分っていうのはあったんですか。
―田中 『攻殻S.A.C.』の第一回目のアフレコ時に監督の方から、「劇場版比べてもうすこしエネルギッシュな公安9課」という話をいただいて、その言葉でみんな役者はもうそれでわかりましたと。最初は『攻殻機動隊/Ghost In The Shell』のときよりも熱血漢でエネルギッシュで、ちょっと若い草薙素子っていうのを意識していたんですけど、だんだん長くなってくると、逆にそれが染みついて。今は意識してないですよね。
―大塚 バトーの顔が画面に出てくると、今やっている『攻殻S.A.C.』のバトーがすっと出て来るので、『イノセンス』は劇場版『攻殻機動隊/Ghost In The Shell』の後の話なんだと意識しながらやりましたね。『イノセンス』のバトーは経験値も上がっているだろうし、いろんな意味でくたびれていたりするのかなと。劇場版『攻殻機動隊/Ghost In The Shell』の当時はまだ僕も40歳になっていませんでしたし、そういう意味では今の方が素直にできるんですけどね。
―櫻井 ちょうど『イノセンス』のお話が出たんで、そっちの話をしようと思うのですが、直接『攻殻S.A.C.』のスタッフ的には重複している部分はないんですけど、キャストの方は同じですので。最初にアフレコの時に映像を見たときは、いかがでしたか。
―大塚 ぶっ飛びましたね。美しくて。
―田中 すごい。
―櫻井 『攻殻S.A.C.』もテレビシリーズとは思えないクオリティですけど、やっぱり『イノセンス』は別物で、すごいものになってますよね。
―大塚 以前フルCGのアフレコの仕事をやったことがあって、それに当て込んでいく作業がすごく気持ちが悪かったんですよ。そういう意味で僕は絵の方が芝居がやりやすいと思っています。『イノセンス』は明らかに絵なんだけど、なにかが違う。そこには秘密があるんでしょうね。
―櫻井 秘密だらけの押井節に仕上がっていると思います。神山監督も予告編はご覧になったんですか?
―神山 そうですね。予告編は見てますし、脚本の方も読ませていただいているんですけども、あまりにも贅沢な作りをしているんで、見ると腹が立ってくるんですけどね(一同大爆笑)。敢えて製作工程を覗かないようにはしていたんですけども。
―櫻井 Domino作業(映像処理)をしている時に一度差し入れを持っていったんですが、その時に上がってきた3Dのバックを見て「あいつらこんなことやってたの?」って押井監督自身が驚いてましたからね(笑)。すげえことしているなと。ものすごいクオリティだなと。そちらの方も楽しみにしていただければと思います。また、『攻殻S.A.C.』のゲームも3月4日に発売されるんですが、こちらの方も田中さんと大塚さんが参加されてますよね。普段のアフレコ現場とは違うことはありましたか?
―大塚 まだ全然絵ができてない状態で、ここはこんな風に動きますっていうのがあるシーンなどでは、とりあえずセリフだけこういうテイストでという録り方をしていましたね。そういう意味では馴れているキャラクターでよかったなと。
―櫻井 なるほど。テレビシリーズをやっていなかったらちょっと辛かったかもしれないですね。
―大塚 また、音響のディレクターをしてくれたのが若林さんでしたから。知らない人だったらすごい不安だっただろうなと。
―櫻井 若林音響監督。『攻殻S.A.C.』もそうですし、ゲームも、『イノセンス』も。『攻殻機動隊/Ghost In The Shell』も。長年の信頼関係があってからこそ実現したということですね。お二人はゲームはされるんですか。
―大塚 僕はしますよ。早くやりたいですね。
―田中 わたしはヘタなんで、素子でやってもすぐやられちゃうかもしれないですね(笑)。
『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』では、時代性のあるテーマを
―櫻井 では、最後に『2nd GIG』の話をしたいんですけど、神山監督。これは『イノセンス』繋がりって言うこともあり、クレジットに「ストーリーコンセプト:押井守」と書いてあるんですけど、ストーリーコンセプトっていうのはなんなんですかね。
―神山 押井さんは新しいシリーズとしてやる上での根拠を示してくれたと思っています。実際の関わりとしては、会議の時に毎回宿題を出してくれて、でも投げっぱなしみたいな(一同大爆笑)。全部チェックはしてくれているんですけど「“てにをは”間違えてるよ」とかですね、まるで学校の先生のような感じでしたね。作品の内容に関してねじ曲げようとか、「オレのテイストにもっていってやる」っていうのはなかったです。ただ「犬は出せ」と(一同大爆笑)。「戦争はしておけ」とかね。
―櫻井 そういった押井さんが好きなテーマと、神山さん自身が好きなアクチュアル(現実的なさま)なテーマ、それはテロであるとか戦争とかを、もしかしたら折衷として宿題にしたのかもしれないですね。テロや戦争というのは時代性があるし、すごく現代の抱えたテーマなんじゃないかなという気がするんですね。最終的にこのテーマでいこうと神山監督が決めたのは、真っ向勝負なところもあるんじゃないかなと、一般視聴者の視点で見ると思うんですが。
―神山 『2nd GIG』では難民問題を取り上げるのですが、『攻殻S.A.C.』を見ていらっしゃった方にはわかると思うんですけど、『攻殻S.A.C.』では、荒巻の兄のエピソードとして難民街というのを出したんですよ。その設定が『攻殻S.A.C.』では描ききれなくて、それを見たときに押井さんが、「難民いいな。こういう仕掛けがあるんだったら使えよ」と。難民に関してはそう言う形で触れてみようかという形で出てきたんですね。テロに関してはやはり時代的なものがありまして。戦争とかテロというものは21世紀になってきて、見えてきている側面が変わってきていると思うんですよ。テロ側の事情もわかってきちゃっうし、今回のアメリカの戦争にしても、一般人でも裏の事情みたいなものがなんとなく見えている状態ですごく茶番臭い戦争が行われてしまう。そんな状況の中で大変だけども「お前等の世代がどういう風に思うのかっていうことをちょっと言及してみろや」っていうことじゃないかなと思うんだよね。カウンターテロの組織である公安9課は、草薙もバトーも、そういうものに常に接していく組織だから、それに携わっていく草薙やバトーがどういう心理チェンジが起きるのだろうかと。そういう押井さんからの注文っていうのはやる価値があるなと。押井さんも、もし自分がやったらっていう答えを用意しているのかもしれないですけどね。
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