P.I.STOCKFILE | INTERVIEW/ 01.02 攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX
PROFILE/
菅野よう子
菅野よう子
早稲田大学在学中にバンド『てつ100%』のキーボードとしてデビュー。解散後、作曲家として活動を開始し、『マクロスプラス』でアニメーション音楽に初挑戦。代表作に『MEMORIES』『ブレンパワード』『カウボーイビバップ』『ウルフズ・レイン』などがある。また声優の坂本真綾への楽曲提供でも知られている。
佐藤 大
佐藤 大
作詞・小説・企画・放送構成・脚本とメディアを問わない活動を続ける執筆家。『カウボーイビバップ』では設定協力、脚本、コミックスの原案、LD・DVD封入のライナーノーツの執筆、リミックス盤の企画などさまざまな形でかかわる。現在は『攻殻機動隊S』のほかに『ウルフズ・レイン』の脚本も手掛けている。
INFORMATION/
STAND ALONE COMPLEX O.S.T.
STAND ALONE COMPLEX O.S.T.
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FOOTNOTES/
注1)72年から86年にかけて放映された刑事ドラマ。石原裕次郎率いる『石原軍団』が多数出演している。
注2)『太陽にほえろ!』と同じく79年から84年にかけて放送された刑事ドラマ。日本の警察とは思えない派手なアクションシーンが話題に。
菅野よう子(YOKO KANNO)×佐藤 大(DAI SATO)02
 2003年1月にリリースされた『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.』の全曲紹介を菅野よう子自らが解説。そして脚本を担当している佐藤大が『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX』のスタッフの立場から、対談形式でさらに深くO.S.T.に迫る。楽曲のイメージやタイトルの理由など、ハッと驚くエピソードや裏話、そして次回作の構想までも飛び出す“濃いい”全曲紹介!
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01. run rabbit junk
―菅野よう子(以下、菅野) 警察無線でよく隠語とか使いながら世間話をするじゃないですか。『トラック野郎』同士の、「かあちゃんと別れたのかよ」みたいな会話。そういうイメージで何かやりたかったの。だから最後に無線みたいのが入ってるよ。そう、だから詞も何となくそういう感じになった。かっこいいだけじゃない、日常のくだらないやり取りみたいなのを曲にしたいな〜って。
―佐藤大(以下、佐藤) 凄い緊迫した話をしてるのかと思ってた!
―菅野 全然してない(笑)。楽曲的にはもちろんある程度の重さを持たせたけど、でも最初の発想は警察無線の応酬でしかもファンキイな話。「○○ダイナーでコーヒー飲む?」みたいな。
――― 今回の『攻殻S』のテーマを如実に表していますね。今回はそういう雰囲気がず〜っとあると思うんですよ。
―佐藤 刑事ドラマ的な部分だよね。
―菅野 オレが最初に浮かんだビジュアルは、素子が半ケツの後ろ姿で、荒巻さんやバトーを後ろから肩を抱えて「よ〜し、飲みに行くぜ〜」って、その向こうに赤ちょうちんとかが見えてる(笑)。
―佐藤 でも、それ合ってるね。
―菅野 今日の仕事が終わったら「はい、飲みに行くぜ〜」っていうビジュアルだもんね。
―佐藤 だんだんそうなってきたでしょ、後半の素子。“おねえ”な感じになってきたよね。最後のバトーとの会話とか、すっごいオヤジな感じに。
02. ヤキトリ
――― だから『ヤキトリ』?
―菅野 そうなんですよ、来たね! そうなの、だから『ヤキトリ』なの。
―佐藤 ははは! 上手い!(笑)。そうか〜、なるほどね。正しい理解ですね。先を予見していたかのような。
―菅野 まじでー!
―佐藤 あの泣きギターですからね。
―菅野 「どこが『ヤキトリ』?」って思うでしょう。オレからこうやって説明されなかったらなんだと思うんだろう? これ。焼死体みたいなイメージ?
―佐藤 いや違う(笑)! いや〜、単純に「なんで『ヤキトリ』?」と思った。
―菅野 ただの赤ちょうちん。
―佐藤 ぼくは、『太陽にほえろ!』(注1)っぽいな〜って。ちょうど脚本会議をやってるときに、監督に一番最初に言われたのは「カッコイイ『攻殻』ではなくて、刑事ドラマで群像劇で。刑事物に例えるなら派手な『西部警察』(注2)ではなくて『太陽にほえろ!』のような人情ドラマがやりたい」と。『太陽にほえろ!』って殉職のシーンばっかり有名ですけど実はほとんど人情モノ。それで脚本が上がってから音楽を聴いたら「ほえてるね〜」って。
―菅野 じゃあ合っててよかったんだ。
―佐藤 合ってる! 観てないのにほえてるのか〜、凄いな。
―菅野 観てないよ、むかしテレビ見させてもらえなかったもん。
―佐藤 『太陽にほえろ!』を知らないってのは逆にすごい(笑)。
03. スタミナ・ローズ (Gabriela Robin)
―菅野 これはね〜、第1話の頭を何にしようかな〜と思って書いた曲。
―佐藤 4つ打ちで、正統派っぽいダンス・ミュージックだったから驚いた。
―菅野 あれダンス・ミュージックなの!? なんか『攻殻S』はね、キック4つ打ちっていうのを自分で決めてて。
―佐藤 菅野さんの曲でここまで4つ打ちって無いじゃないですか。だから「おおっ!」って。
―菅野 オレ、4つ打ち大っ嫌いだったけど初めてやった。でも『攻殻』って4つ打ちなんだよね。作品毎に大体リズムを決めるんだけど、『攻殻』はどうみても4つ打ちだな〜と。
―佐藤 でも以前「思い入れたっぷりだとダメだ」って言ってましたよね?
―菅野 それあるかもしれない。
―佐藤 やっぱりマイナスで燃えるタイプなんだ(笑)
―菅野 それはある。それすごいある。
04. surf
―菅野 世の荒波をサーフィンする。なんて言うか日常のくだらない事とか。どっちかというと犯罪捜査とかじゃなくて、お仕事に行ってるんだけどカミさんに「子供、幼稚園連れてってよ!」とか言われてるような、そういう日常。そういうものを軽くサーフしながら仕事に行くぜっていう感じ。
―佐藤 うわあおっ! 捜査のテーマかと思った。
―菅野 まあでも、捜査は捜査よ。捜査してるときに、「今日なに食おうかな〜」とか。
―佐藤 そういうのって神山監督にはないですからね。思考の寄り道はいっぱいあるけど、お話はなるべく早くという人だから。
―菅野 きちんとね。(余計な話し、という意味での)ゴミが無いもんね。
―佐藤 だからいいのかもしれない。どんどん音楽が寄り道してるっていう。
―菅野 ゴミ臭い感じで(笑)。
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